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知って!学べる!SARデータ分析チャレンジ

開催レポート

これまで一般公開されることが少なかった航空機SARデータ利活用の一環として、主に技術者を対象とした「SARデータ分析チャレンジ」イベントを開催しました。
総勢30名の方がエントリー。大学生から教員、研究者、個人、企業からの参加など、バックグラウンドの異なるメンバーが集まり、イベントの中でチームを組んでオリジナル災害マップの制作に取り組みました。また、イベント期間中、SAR・GIS・災害の専門家で構成されるメンター陣とのディスカッションも活発に行われ、技術者交流の場としても盛り上がりました。

実施内容

このイベントはオンライン学習と会場イベント(三回)の二つのプログラムで構成されます。参加者はイベント期間中(2019年3月18日~2019年5月17日)、約2か月にわたり、主催者側から提供されるシステム基盤とSARデータの分析トレーニング教材を使って個々のペースでオンライン学習に取り組みます。さらに会場イベントにて、チームでオリジナル災害マップの制作にチャレンジします。
テーマは「SAR×GISの特徴を生かしたオリジナル防災マップ」。独創性・有用性・将来性の3つ軸を念頭に置いて制作に取り組みました。

会場イベントDay1はシステム基盤を使ったハンズオンと災害マップのアイディエーション。Day2では初日で出たアイデアをもとにメンター陣とのディスカッションを交えてブラッシュアップし、中間発表を実施。会場イベント最終日のDay3ではこれまでの学習成果やチーム作業の集大成としてオリジナル災害マップの成果発表会を開催。優秀な作品にはチーム賞が授与され、さらにこのプログラムの中で活躍した個人に対して個人賞が授与されます。

2019年4月12日 Day1「ハンズオン・アイデイエーション」

Day1は、24名の参加者が集まり、是津耕司氏(情報通信研究機構 統合ビッグデータ研究センター 研究センター長)の開会宣言によりスタートしました。

ハンズオン

Day1では、事前にオンライン学習で学んだSARデータ分析プログラムを使って、「SARデータ×GISデータによる新しい災害マップ」を作成するまでの一連の流れをハンズオン形式で実施しました。

今回は作品の1例として「農作物津波被害マップ」を作成しました。 農作物津波被害マップは、津波が発生した時にその地域が生産する農作物への被害度合を農業ドローンで計測し、被災した地域あるいは小売業者が被る損害度を把握するというストーリーの元、特に被害の大きい領域を示したマップです。

「農作物津波被害マップの作成」

「ハンズオンの様子」

アイディエーション

SARデータの特徴と分析プログラムの内容を踏まえ、災害マップのアイデアを具体化するために、個人ワークとグループワークを繰り返し行い、アイデアシートに書き出しを行いました。ここでは自分の視点・立ち位置で、重視する/心配するコト・モノを記入し、災害時どういう情報が必要であるのかという観点から災害マップのアイデアを出します。

「個人ワーク・グループワーク」

「アイディエーションの様子」

作成されたアイデアシートを参加者全員で見て回り、面白そう!と思ったものを投票し、投票の多かった上位のアイデアを全員の前で発表。
その後、上位のアイデアの中からこのチャレンジで取り組んでみたいものに賛同する方どうしでチーム作りを行い、合計9チームが結成されました。

「紹介されたアイデアの例」

2019年4月19日 Day2「チーム作業・中間発表」

Day2では、Day1で結成されたチーム別に、どのような目的の災害マップを作るのか、そのマップを作るためにSARデータの特徴やGISデータをどう活かしてどのような処理を行うのかなど、チャレンジの内容を具体的にまとめて発表しました。

メンター陣を交えたチーム作業

各チームに分かれて、災害マップの具体的な内容をまとめました。参加者は、SARデータやGISデータを用いてこんなことができないか、こんなストーリーで災害マップを活用するのはどうかなど、メンターからアドバイスを受けながらこれからのチャレンジ作業の内容をより明確にしました。

「チーム作業の様子」

中間発表

各チームで考えたチャレンジ内容を中間報告としてチームごとに発表しました。SARデータから抽出した災害後の”使える道”と避難所のキャパシティとを掛け合わせたマップや、SARデータから抽出した”傾いている木”の散布図から土砂崩れの危険性のある場所を表したマップ等、多様なアイデアが発表されました。 また、ライブ配信サービスSlidoを使用し、疑問に思ったことや意見を

リアルタイムにスクリーン上に表示するとともに、メンターや他のチームから直接コメントをもらうなど、盛んな意見交換が行われました。 いずれのチームも大変ユニークでチャレンジングな内容を設定し、Day3(5月17日)の成果報告会に向け、約1か月間、SARデータ分析プログラムや災害マップを開発する作業をオンラインで進めていきます。

2019年5月17日 Day3「成果発表会」

Day3では、これまでの集大成として成果発表会を行いました。Day2から約1か月間をかけて自分たちで設定したチャレンジ課題に取り組み、オリジナル災害マップを制作。発表では、なぜこのマップが必要なのかといったコンセプトや使用シーンの提示から、組み合わせたGISデータの解説、SARデータに関する分析プログラムの実装についてプレゼンテーションを行いました。

成果発表会

各チーム持ち時間8分のプレゼンテーションと2分の質疑応答による発表となりました。審査委員が独創性・有用性・将来性の三つの評価軸で審査を行いました。

成果発表会の様子と審査委員(右下)。審査委員は、左から主催者代表の是津耕司氏(情報通信研究機構 統合ビッグデータ研究センター 研究センター長)、廣井悠氏(東京大学大学院 准教授)、山口芳雄氏(新潟大学Fellow)

また、プレゼンテーションと合わせて、各自のテーブルで行うタッチ&トライを実施。PCを使ってより詳細な分析プロセスの説明を審査委員とのディスカッションを交えて説明を行いました。

タッチ&トライの様子

特別セミナー

成果発表会終了後には、このプログラムの災害メンターでもある松島康生氏(災害リスク評価研究所)による特別セミナーを開催しました。テーマは「ハザードマップ・興味を持ってもらえる表現方法」。これまでの経験を踏まえ、災害の専門家の立場から貴重なお話をいただきました。

特別セミナーの様子

表彰式

全9チームによる熱のこもったプレゼンテーションが行われ、審査委員による厳正な審査の結果、以下のチームが表彰されました。

NICT賞(最優秀賞)
チーム:アーク
作品名 農地の被害状況の把握マップ
概要 当チームは、地震・風水害などの災害発生時において、現地調査が困難な状況を想定し、農業関係者が被害状況を分かりやすく把握するためのマップの作成に取り組んだ。SARデータを使用して迅速に農地の被害範囲・被害程度を可視化することにより、農家は自身の農地の被害状況を把握でき、農地を管理する団体は保険金の算定や復旧計画を支援する広域的な参考情報として活用するなど、様々な効果が期待できる。

審査委員特別賞(優秀賞)
チーム:森
作品名 土砂崩壊地内の危険木マップ
概要 地震や豪雨による土砂崩れが発生した後、市町村職員等の関係者が災害によって倒れかけている危険木がどこにあるか把握できるマップを作成することを目的とした。悪天候でも雲を通して撮影でき、物質や当たる方向によって反射特性が変わるSARの特徴を活用した。災害前後のSAR画像をオブジェクトベース分類し、空中写真から判読した斜め木のあるオブジェクトの特徴を抽出することで土砂崩壊地内の危険木マップの作成を試みた。


また、今回のチャレンジに対する積極的な取り組みや会場イベントで活躍した個人を対象に、メンター陣の投票にもとづき、以下の個人賞が贈られました。

最優秀個人賞
わたなべ よしのりさん
(チーム:スタートダッシュ)

優秀個人賞
猿谷 享子さん(チーム:MCCK)

優秀個人賞
篠原 碧さん(チーム:歩きやすい道)

全チームの作品紹介はこちら